日本文学Web図書館を推す
さらに進化したWeb版を推す
都留文科大学名誉教授・同元学長 久保木 哲夫
和歌の研究者はもちろん、日本文学の研究者で『新編国歌大観』を手にしたことのない人はいないであろう。和歌の一大宝庫である『新編国歌大観』が書籍版からCD‐ROM版になった時、その便利さにまず驚かされたものだが、つづいて『私家集大成』もCD化されて、CD‐ROM版の価値は決定的となった。今や歌に関するさまざまな調査はほぼコンピュータがしてくれる。研究者の仕事はそこからどういうことが考えられるかの一点となろう。
この度、そのCD‐ROM版がさらに進化してWeb版となった。インターネットにアクセスできる環境にあれば、いつでも、どこでも、外国からでも『新編国歌大観』や『新編私家集大成』が使えるようになる。しかも同時に横断的に検索ができるのだ。早く使ってみたいと思うのは私だけではないだろう。
今後は、新資料や新事実が見つかれば、ただちに追加や訂正が可能となる。加えて、平安朝の物語や随筆、いくつかの大辞典、現在企画中の『和歌文学大辞典』や『歌合集成』などもコンテンツに追加されるとなれば、まさに、ネット上に古典のライブラリーが出現する。使うだけでなく、その充実をはかるのもわれわれ研究者の責務となるが、このライブラリーによって研究の一層の進展が期待されよう。
将来を見据えた検索システムの構築に期待!
逸翁美術館館長 伊井 春樹
私どもの毎日の生活において、ネットによって張りめぐらされた情報化社会からもはや逃れようがないし、ますますこの現象は加速度的に進んでいくことであろう。スマートフォンには衝撃を覚えたし、電子出版は各種のリーダー機器の登場によって新しい展開を見せてきており、動画やテレビとの融合は現実となった。
日本文学研究の世界でも、書籍の索引類には随分と恩恵を受け、かつて『国歌大観』などは必須の文献として座右に置いたものである。それが『源氏物語』や『新編国歌大観』『角川古語大辞典』等のCD‐ROMが出現し、飛躍的に必要な事項の検索が容易となり、研究環境は大きく変わってきた。ただ、一枚ごとにCDをパソコンに入れる煩雑さがあったが、それを今回の企画では数多くの作品の情報も一度にアクセスできるという。しかも、新しい情報の整理、さらに名著への参照など、将来を見据えた情報検索システムの構築だけに、私としては大賛成であるし、心から利用を推奨したい。
その先には、細密な絵巻や浮世絵等の絵画、有職故実、演劇の動画、美術館や博物館とのネットワークを結ぶことなど、夢は次々と紡ぎ出されてくる。その方向に進もうとする「古典ライブラリー」に賛同し、多くの方々の参加を切に望みたく思う。